
PROJECT STORYいい商品にはストーリーがある。
世界初の画期的な
新開発インクを搭載
「JETSTREAM」が
世に送り出りだされるまで


- Phase1開発の始まり
- Phase2商品化に向けて
- Phase3市場への導入
苦手意識から生まれた発想
従来の油性インクのにじみにくさを保持しながら、水性インクに勝るとも劣らないなめらかな書き心地を持つ「ジェットストリーム」。爆発的な売れ行きで成熟市場と言われていた油性ボールペンに新風を吹き込んだこの製品の開発は、他グループから移動してきた一人のインク設計者の発想からスタートした。
「ジェットストリーム」のプロジェクトリーダーを担ったのはインク設計者であるIだが、実はそれまでに油性ボールペンに携わった経験はなかったという。「私は筆圧が弱いので、油性ボールペンは苦手でした。使うのはいつも水性ボールペン。そんな中で油性ボールペンの担当になり、自分でも軽く書けるような製品を作ろうと思ったことがきっかけでした。」
通常、新製品の開発は部内で定期的に行われる「アイデア会」での発表や、各グループ単位での中長期テーマに基づいての取り組みから生まれる。しかし「ジェットストリーム」の場合は、Iが単独で発想し試作し、それを部内に提案したことから始まった。「はじめは市場とかマーケティングのことは一切考えませんでした。今までと違うものを作ろう、自分に使いやすいものを作ろう、と(笑)。私はインクの設計者なので、そこを切り口に一人で地道に工夫しながらなめらかさを追求したことが起点です」とIは語る。


ジェットストリーム
開発チームリーダー

ペン先(チップ)の設計を担当
※横浜研究開発センターは品川に移転しました
実際に書いてみる。その繰り返しだった。
手探りでのインク開発
従来の油性ボールペンには、書き味が重いことだけでなく、描線の色が薄い、乾きにくく手が汚れるなどの欠点があった。「違うものを作る」という観点から、Iは、それらの欠点を全て改善するための試作を繰り返す。
「濃さを実現するために顔料を使ってみたり、速乾性の向上のためにインクの溶剤をがらっと変えてみたり。なめらかさに関しても、従来より粘度が低く潤滑性に優れたものをいくつも試しました。どれかひとつに特化させるのではなく、すべての性能を追求しながらバランスを保つ最適な配合を模索したわけです」。配合に使った原材料は、ほとんど全てが今までの油性ボールペンでは使われていなかったもの。そのため、会社が培ってきた油性ボールペンのノウハウが全く生かせなかったという。「試作インクをいくつも作っては、それらを全部ボールペンに入れて実際に書いてみる、その繰り返しでしたね。配合段階でよさそうに思えても、実際にペンとして書いてみると性能が維持できていないというケースも頻繁にありました。」
初めてのボールペン開発という点でも熱が入っていたというI。会社での実験とデータ分析にとどまらず、社外でも仮説を立ててはノートにメモを取るといった日々が続いた。
社内でのプレゼンテーション
苦労を重ね、ようやく最初の試作品が完成した。社内でのプレゼンテーションを行う。しかしそこでの評価は最悪なものだったそうだ。Iは社内の反応をこう語る。「想像以上に厳しい意見ばかりでした。この時点の試作品では、チップ(ペン先部分)は従来品を使用していました。新しく開発した粘度の低いインクは、このチップには負担が大きすぎたんですね。」
「ペン先がすべりすぎる」「書き味が硬すぎる」という評価の中、このプロジェクトを存続させたのは、当時の経営幹部から発せられた「やってみろ」のひと言だった。こうして先行きがはっきりしているわけではない状態の中でプロジェクトチームが結成され、“今までにない”油性ボールペンの開発が本格化する。

- Phase1開発の始まり
- Phase2商品化に向けて
- Phase3市場への導入