三菱鉛筆と人気文房具YouTuber・しーさー氏による、『KURUTOGA Metal』をテーマにしたスペシャル対談です。
スタイリッシュな
デザインと新たな書き味
西村
三菱鉛筆の商品開発部の西村と申します。シャープペンブランドのクルトガを中心に、商品の企画に携わっております。
しーさー
しーさー文房具chのしーさーと申します。普段はYouTubeで動画投稿などをしています。また最近では会社を立ち上げまして、文房具ブランドのローンチへ向けて準備中です。
しーさー
率直な感想としては、文房具好きにすごく刺さりそうだなと思いました。素材や表面の加工からも三菱鉛筆さんのこだわりが感じられますね。特にこのグリップ部分、こういった加工はあまり見たことがなくて、個人的にとてもワクワクしました。
西村
文房具好きに刺さりそう、というのは嬉しいですね。これまで金属製のシャーペンのグリップ部分は「ローレット」と呼ばれる格子状の加工を施すことが多かったのですが、「長時間使用していると手が痛い」という声も挙がっていたので、「クルトガ メタル」では柔らかさと滑りにくさの両立を目指しました。
しーさー
なるほど。握ってみると、これまでのペンにはなかったような結構独特な握り心地がありますね。金属だけど硬すぎない、なんなら少し柔らかさも感じる。
西村
クルトガシリーズは、ありがたいことに、これまで幅広い層の方からのご支持をいただいていて、実際に最初に好きになったシャーペンの1本だったというお声をいただくことも多いんです。このクルトガ メタルは、そこからもう一歩先に踏み込むというか、よりこだわりたい、自分らしいペンを探しているという方に手に取ってもらいたいという想いから企画がスタートしました。そこから色々なアイディアを出し合うなかで、「全体を金属で設計してみるのはどうか」という案が生まれました。
しーさー
そっか、「全て金属」というのは今回が初なんですね。
西村
正確にはペン先のニブダンパーというパーツは樹脂なのですが、それ以外は全て金属になっています。
デザイン面ではスマートフォンやパソコンなどから着想を得て、日常的に持ち歩く他のアイテムと調和するような表層や形状を意識しています。
しーさー
これまでのクルトガとは全然違いますね。書いてるときの音が静かだし、ブレ感も少なくなっている気がします。
西村
両方とも「クルトガ メタル」のこだわりポイントなので、気づいてもらえて嬉しいです。
しーさー
クルトガって書き味がちょっと独特で、好みが分かれると思うんです。でも、この「クルトガ メタル」は全然違う書き味なので、これまで苦手だった方にも試してみてもらいたいですね。……これってエンジンも新しくなってるんですか?
西村
エンジン自体は去年登場したKSモデルと同じ、ブレを最小限に抑えたエンジンを使用しています。さらに、金属による剛性感やペン先に樹脂製の「ニブダンパー」を搭載することで、筆記時にペン先のパーツ同士があたったときにする音の軽減と、より高い安定感を実現することができました。
しーさー
同じエンジンでここまで書き味が変わるのはおもしろいですね。あと、ノック感も変わりましたよね? よりカッチリしたというか。
西村
そこに気づいてもらえるとは……。流石です(笑)。すごく細かい部分なので、大々的に打ち出してはいないのですが、今回のクルトガメタルには専用部材を使用し、また金属の剛性感も相まってノック感もより良くなっています。設計担当者が聞いたらとても喜ぶと思います。
クルトガシリーズの歴史
しーさー
中学1、2年生のときに、初代のクルトガ スタンダードモデルを買わせていただきました。当時からギミックに惹かれることも多くて、スケルトンのグリップ部分からエンジンが回っている様子をよく眺めていました。「これ、どういう仕組みなの?」って(笑)。
西村
やはりエンジンが外部から見えるのがスタンダードモデルの特徴ですよね。「クルトガと言えばこれ」という方もいらっしゃるくらい、今でも存在感が強いモデルです。
しーさー
それから色々なタイプのモデルが出たり、エンジンが改良されたり、進化していく様を見ているのも楽しかったですね。まるで自動車のように、どんどん新しく、便利になっていく。……そもそも、初代のクルトガってどのようなアイディアから生まれたんですか?
西村
20年近く前のことなので、私も社内の先輩から聞いた話なのですが、元々は自動で芯を押し出す仕組みを考えていて、そのために電池を搭載したりしていたようです。その過程の中で、途中で芯を回転させる機構が生み出されて、以前からあった「芯の片減り」という課題と合致させる形で開発/商品化に至りました。
しーさー
全然違うアイディアが元になっていたんですね。興味深いです。
西村
何人もの開発担当者が引き継ぎながら、その後も開発を続けていて。2022年には自動芯繰り出し機能を備えたクルトガダイブの商品化も実現しました。
しーさー
色々な枝分かれがある中でこの「クルトガ メタル」も生まれたわけですね。歴史背景を知ると、より愛着が湧きますね。
しーさー
先ほどの話とも被っちゃうんですけど、以前のクルトガがしっくりこなかった方には、騙されたと思って一度試してみてもらいたいです。書き味が全然違うので。あとはこの金属の高級感とか、ギミック好きな僕のような人間にもおすすめしたいですね。
しーさー 文房具chの歴史
西村
せっかくの対談の機会なので、私からもしーさーさんにお聞きしたいことがありまして……。
しーさー
もちろん大丈夫ですよ。
西村
いつも動画など拝見しているのですが、しーさーさんが動画投稿を始めたきっかけって何だったのでしょうか?
しーさー
今年で動画投稿を始めて10年目になるんですけど、最初に投稿したのは2014年、当時中学3年生のときでした。ちょうどその辺りから「YouTuber」という言葉も出てきて、僕自身も文房具系のYouTubeチャンネルをよく見ていたので、自分でもできるんじゃないかっていう謎の自信が湧いてきて。まだ自分のスマホを持っていなかったので、父のスマホを借りて動画作成を始めました。
西村
文房具を好きになったのはいつ頃からなのでしょう?
しーさー
同じくらいのタイミングですね。YouTubeを観ているうちに文房具に興味を持ったんです。人気YouTuberさんが1000円以上するシャーペンを紹介していて、当時の僕にとってはその価格や機能が衝撃的で、父におねだりして買ってもらいました。それから色々な文房具を手に取るようになりましたね。
西村
なるほど。YouTubeでの活動に対して、手応えを感じたり、転機になったタイミングなどはありますか?
しーさー
コロナ禍が大きかったですね。当時大学生だったんですけど、授業もリモートになって、時間が余るようになったんですよね。そこで動画投稿により力を入れてみようと思いました。
そのときは動画の伸びるコツとかもわかってなくて、色々なことを試していました。一時期、長尺の動画に広告をたくさん付けて投稿したら、文房具界隈で炎上してしまって。そこでの反省を活かして、今度は内容を凝縮した短尺の動画スタイルにシフトしたんです。そしたらたくさん高評価をいただけるようになって。
しーさー
そんなにカッコいい話ではないですけど(笑)。今年は登録者100万人と、最初にもお話したオリジナルブランドの立ち上げを目標に動いています。今まで他の企業さんとコラボさせていただくことはあっても、自分で一から筆記具を作ったことはなかったので、細部までこだわって完成させたいです。
僕らの若い時代に比べて、今は文房具もたくさんの選択肢が出てきましたよね。親御さんも文房具なら多少高くても買いやすいと思いますし、子どもたちにとっては初めて手に取る本格的なアイテムが文房具になることも多いと思うんです。だから、僕もそういった価値のあるアイテムを提供したいですね。
西村
素敵ですね。おっしゃる通り今は選択肢も広がっているし、お客様のニーズも多様化していると思うんです。クルトガも15年以上の歴史を積み重ねてきましたが、今後も時代のニーズと共に進化を続けて、初めての方にも、昔から愛用してくださっている方にも使ってもらえるペンを生み出していきたいですね。