PROJECT STORYいい商品にはストーリーがある。

シャープペンシルの本質を
変えた新商品
「KURU TOGA」
は、こうして生み出された

KURU TOGA

プロジェクトが動く

プロジェクトチームのリーダーとして招かれたのは、爆発的売れ行きを見せるボールペン「ジェットストリーム」成功の立役者であるKだった。しかし、そんなKも当時は不安を感じていたという。「量産化できるのか、発売時期に間に合うのか、お客様は受け入れてくれるのかという不安ですね。また、ここまでIが作ってくれたからには、失敗は許されないというプレッシャーもありました。」

その点はNも同様だ。「量産化というとスペックダウンして作りやすくしたいぐらいなのに、まだステップアップを目指さなければならなかった。正直やり遂げれるのか、という気持ちでした。」

そんな彼らを動かした原動力は、随所で“ここはこうしたい”という思いを二人にぶつけてくる、Iの熱意だった。

モデルは完成していた。
失敗はゆるされないと
プレッシャーを感じた。
横浜研究開発センター K
クルトガのプロジェクトリーダー
絶対に受け入れられるものを
作りたいと思った。

商品化に向けてのアンケート実施

試作品を社内で実際に使用してもらうアンケート調査も実施された。その結果はIたちの期待とは裏腹に、非常に悪いものだったという。

「自分自身は思ったものができたつもりだったのですが、細かいところへの配慮が足りなかったんですね。機能は分かるけど、使い心地が良くないという評価でした」しかしIはここで諦めることはなかった。「完成度を上げなければと、みんなでブラッシュアップしていきました。ここで叩かれたことが悔しくて、絶対に受け入れられるものを作りたいという思いでしたね。」

「1回目の社内アンケートはボロボロ。かなりショックは受けましたが、“だからダメだ”とは感じませんでした」。アンケートを実施した商品開発部のSも同じ気持ちだった。

完成度を高めての社外アンケート

このアンケートの目的は、単に評価を確認するだけでなかったとSは語る。「今までにない商品なので、品質レベルでどの程度のものを作ればよいのか基準を定めるという意図もありました。」どれくらい尖ったら良いのか、筆記感触はどれくらい必要かといった感覚的なことは、自分たちで決めるより、調査をもとにユーザーが使いやすい基準を定める必要があっというわけだ。

アンケート結果をもとに品質基準が定められ、さらなる議論と改善が進められた。研究開発・商品開発という部署の枠を越え、職場で、飲み屋でメンバー同士の議論は絶え間なく続いたという。

商品としての完成度を高めた後、社外向けの第2回アンケートへと挑む。これ以上は失敗できないという思いのチームに待っていたのは、嬉しい結果だった。「“このペンが欲しいですか”という質問に対して80%以上が欲しいと答える、出来すぎの結果になったのです。純粋に書き味だけで評価してもらうため、回転が見えない真っ黒の外装でテストしたのですが、大部分の人が“違う”と言ってくれ、芯が違うのでは?という意見もあったほどでした」Kの言葉には当時の喜びがうかがえる。

「同じ芯を使っても、書いた字が他のシャープペンとは違ってくるのです。細くて濃いんです。見比べれば一目瞭然。モニターの方々はそれを敏感に感じてくれた。」アンケート結果はNにも大きな自信をもたらしていた。

これまでにない商品で、品質基準から作っていく必要があった。

“量産”に向けての挑戦

アンケートの好結果を受け、プロジェクトは実際の商品化へと進む。この段階では、品質を保ちながら限られた投資額の中で量産化を実現する必要がある。

Sは語る。「アンケートで80%が“欲しい”と答えたからといって、実際に日本の中高生の人口の80%相当分が売れるわけではありません。これまでにない商品なので投資に対してどれだけ回収できるかもまったく未知数。そのため最低限の投資でのスタートとなりました。」

コストと品質の調整に向けて、研究開発の苦労は続く。筆記感触の保持と安価に量産することの両立がなかなか見いだせない。「しかし最後まで諦めずに探索を続けた結果、金型(注:かながた、金属や樹脂の成形品を作るための鋼鉄で作られた「型」)を製作する直前、Nさんが理想的な手法を発見してくれたのです」とIは振り返る。急遽、製品の図面を変更して対応。その結果、高い完成度の製品が完成した。「このNさんのアイデアもそうですし、Kさんが成形技術の面から設計を改良したり、組み立て順や検査方法をみんなで作りこんだりと、チーム一丸になって取り組んだことが良い結果に繋がったのだと思います。量産のほうが試作品より完成度が高いということは少ないんです、普通は。」

商品名は社内公募の結果、回ること、尖ることを象徴して「KURU TOGA(クルトガ)」に。「エポックメイキングな筆記具が完成したと思います」とIは語る。

品質と生産コストを両立させる機構の開発は土壇場で実現できた。
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