PROJECT STORYいい商品にはストーリーがある。

世界初の画期的な新開発インク
を搭載
「JETSTREAM」が世に
送り出りだされるまで

JETSTREAM

前例のないチップ開発

インク開発の次のヤマ場となったのは、ペン先にあたる「チップ」の開発だった。チップ設計を担当したMは語る。「なめらか、速く乾く、色が濃いという3つの特長を維持しながらインクとペン先仕様のマッチングを追求し安定させる、という点で大変苦労しました。」これまでもペン先の開発者として経験を積んできたMだが、今回はそのノウハウが通用しなかったという。「今までにないインクだったので、先輩からの助言も受けられないような領域でした。製造方法から変えていくなど、試行錯誤の繰り返しでしたね。」

特に初期段階、お互いの認識がマッチするまでは苦労が絶えなかったそうだ。「私はペン先の技術者として私なりに思うことがあって、IさんはIさんで“今までの概念を取り払ってくれ”と私に頼んできたり。お互い我が強かったので苦労しました(笑)。」とMは振り返る。「Iさんの思うところに、私が今までの概念を崩して近づいていったという感じですね。でも最終的に一番よいバランスになったかなと思います。」

「“ないものは自分たちで作るしかない”という状況。それぞれの担当者が、自分の担当以外の部分にもタッチしながらチーム全体で進めました」とIは語る。

今までにないインク。
チップ開発は製造方法から変えていくことが求められた。
品質のブレ、トラブルばかりが続いた
量産試作だった

量産化への道のり

こうしてプロジェクトは量産試作の段階へと進む。この段階でも、実験室で組み立てたものと工場で流したものとの品質のブレなど、解決すべき課題は多かった。当時の苦労をIは振り返る。「品質のブレやトラブルが起きるとチームで話をして原因の仮説を立てます。それを設備担当者に説明したり、実験で仮説を証明したりしながら製造工程の変更をお願いしたり、機械を大改造してもらったり。スケジュールもとにかくギリギリでしたね」。Mは語る「あまり予算がないところからのスタートでしたが、結果的には最新鋭の装置を盛り込み、原型がないぐらいの生産機械になっていました(笑)。」

当時のチームの様子を象徴するのが次のIの言葉だ。「とにかくトラブルばかりで、他のチームから“お祭り”と言われていました(笑)。普通は書類やパソコンぐらいしか載っていないデスクに、私たちのチームは工場から運ばれてきたペンやリフィル(注:ボールペンの替芯)が山積みだったんです。」

ペン先製造の責任者と半ば喧嘩のような議論を交わしながらも、プロジェクトチームはなんとか量産化への道を切り開いた。

最終レビュー、生産開始へ

すべての準備は整った。後は「最終デザインレビュー」という会議で承認を得られれば、実際の生産が始まる。ところがその直前にまたしてもトラブルが発生。それを解決しながらレビューの資料づくりに追われる。「横浜で資料を作る人、生産現場で手を動かしながら実験する人、それを評価する人と手分けをしました。私は生産現場にいたのですが、最後の最後に集めたデータを夜遅くに横浜へ送り、資料をまとめてもらう間に会議へ駆けつけるといったギリギリのタイミングでしたね」とIは語る。

なんとか間に合わせたレビュー、無事に生産化への承認がなされた。納期を目の前にして生産スタート待ちをしていた工場に連絡し、生産スタートの合図を出す。「今までの苦労があって、ようやく生産です。それはもう嬉しかったです」Iの言葉に当時の喜びがしのばれる。

納期を目の前にして、ギリギリのタイミングで生産へ結びつけた

苦労を経ての完成

プロジェクトが終わり、研究開発センターでご苦労様会が行われた。関係者が続々と集まり、いつのまにか会場の食堂は一杯に。Iは語る「はじめは一人でのスタートだったけれど、こうしてとても多くの人が関わっていたんだと実感することができました。」振り返ってみると、インクの試作数は5桁に上っていたという。

実際に売れるかどうか不安もあったというIだが、商品開発部が担当したペンのデザインが自信につながったと言う。「なめらかな書き味のイメージを流線型のデザインで具現化してくれ、“これはカッコイイ、これなら買いたい”と思えました。」

こうして様々なスタッフの力で生まれた「ジェットストリーム」は、いよいよ実際の市場へと届けられることになる。

そして完成
開発には多くの人が関わっていったことを実感した
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変えた
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クルトガ

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