PTFE分散体

当社は筆記具インクを開発してきた中で、微粒子の分散を通して、様々なノウハウ、技術を培って参りました。その知識を活かして、ナノオーダーのPTFE分散体の開発に成功しました。

有機溶剤への微粒子分散が困難とされていたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をナノ粒子の状態で分散できるようにりました。 これにより様々なお客様のニーズにお応えします。

三菱鉛筆PTFE分散体のコンセプト

三菱鉛筆は、PTFEに最適な分散方法・配合を開発し、フィブリル化することなく様々な溶媒へ分散することに成功しました。

PTFE①.png

一般的な分散方法でフィブリル化した例 

PTFE②.png

当社品の分散体。フィブリル化せず均一な状態。

フィブリル化した分散体は粘度上昇や、粒子の合一が起こり、ポンプを通すことでゲル化することがあります。またゲル化すると生産機のポンプシステムなどに負担がかかり、故障に繋がる可能性があります。

PTFE③製品例.png 下のグラフは、粒子サイズの分布となります。

PTFE④グラフ左.pngPTFE⑤グラフ右.png

当社分散体を使用することで微粒子化されたPTFEの粒が、フィルム樹脂の中で、均一に存在します。これにより、表面に凝集粒子が現れず、当社分散体を使用することで微粒子化されたPTFEの粒がフィルム樹脂の中で、均一に存在します。これにより、表面に凝集粒子が現れず、 またフィルム表面を削ってもフィルム内部の粒子の均一な状態は変わりません。また、削ることでフィルム内に埋もれていた粒子が表面に露出し易くなり、その場合撥水性などの向上が期待できます。

PTFE⑥水色.png

使いやすさ

樹脂に混ぜる際

三菱鉛筆のPTFE分散体は油性系の溶媒にも分散していますので、樹脂、ワニスに混ぜる際、簡単に混ぜることが出来ます。

PTFE⑦3つ製品写真.png

長期保存性

安定性の高い分散体となっており、長期間保管しても、軽く容器を振るだけで、すぐに使用できる状態に戻ります。

PTFE⑧沈降例.png

電気特性

PTFEそのものは、基板や電線などの様々な電気的な用途に使われています。 その理由は、非常に有利な電気特性を持っているからです。 当社の分散体を使えば、比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)を下げることが可能です。

三菱鉛筆PTFE分散体の添加によるDk/Dfの低減例

PTFE⑨添加量グラフ.png

ベース樹脂

市販ポリイミドワニス

PTFE分散体

MPT-D116

測定方法 (Dk,Df)

SPDR(10GHz)

用途例: 2層FCCL

ピール強度向上

三菱鉛筆PTFE分散体は上記のメリットに加え、2層FCCL材料に添加することで、ピール強度が向上します。気的特性に優れた最先端の基板を製造する時に、ピール強度を低下させない設計が製品にとって非常に大切な要素になります。 2層FCCLの界面破壊モデルにおいて、PTFEを添加した系でピール強度が向上しました。

市販ポリイミドワニスと平滑(non-profile)銅箔のピール強度

分散体 Blank MPT-D6@50% MPT-D115@50%

ピール強度

(N/cm)

2.1 4.6

7.8

耐吸湿性

PTFE自体は、撥水性のある材料です。樹脂の中に微粒子のPTFEを入れ込むことによって、吸湿度性の向上が期待できます。

PTFE⑩耐吸グラフ.png

用途例:3層FCCL

2層FCCLと同じ様に、PTFEがピール強度の向上に貢献します。3層FCCLの構成に合わせて、必要な特性を付与するための開発を行いました。 新な分散体は、ピール強度7.0N/cmを達成しました。

PTFE濃度

ピール強度

(N/cm)

銅箔は「粗化面」

ピール強度

(N/cm)

銅箔は「平滑面」

Blank 0% 8.0 3.8
従来三菱鉛筆の分散体 20%

5.0

4.2

改善分散体 20% 7.2 5.2

用途例:塗膜への機能性付与

三菱鉛筆のPTFE分散体を樹脂に配合しコーティングすることによって、撥水特性を付与することが可能になります。 また、表面が摩耗しても効果は持続します。

PTFE⑪摩擦グラフ.pngPTFEの特性として、動摩擦も大幅に減らすことができます。フィルム全体にPTFEの微粒子が存在していることによって、優れた平滑性と摩擦特性の両立が期待できます。

PTFE⑫当社分散技術.png

水性ウレタン塗料 PTFE30%/Film 塗工条件:2mil

PTFE⑬アルコール系塗料グラフ.png

一例と致しまして、アクリル塗料に三菱鉛筆のPTFE分散体を30%(固形分比)入れると、摩擦係数が1/4に低下しました。各種塗料で摩擦低減が期待できます。

PTFE⑭W12T8.png

その他カスタム例

PFOA対応

ペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、過去にすぐれた撥水剤として、衣料品などに多量に消費されてきた歴史があります。しかし、PFOAは、環境中で分解されにくく、高い蓄積性も有するため、 現在は代替の材料に置き換わってきています。このPFOAが、一部のPTFEを製造する際に、ごく微量発生することが分かっています。当社では、環境に対しての配慮と、世界的な規制に従った製品をお客様に提案しております。REACHの規準では、各部品へのPFOAの上限が25ppb未満となっていますが、弊社はその規制をクリアした製品を提案しています。

PTFE⑮PFOAグラフ.png赤い線は、REACHの25ppb規準

製品開発カスタム対応

カスタム製品開発の流れ

当社は、PTFE分散体を含めて、様々な顧客のニーズに合わせて分散技術を提案しています。お客様に最適な製品を提供する為に、下記のような提案活動をしています。

PTFE⑯.png.jpg お客様のニーズ・課題・ビジネスモデルを議論させていただき合意した後、当社で検討し提案を作成させていただきます。 実際の作業としては、設計、測定のサイクルを繰り返し、必要な特性が得られるように開発していきます。

カスタム製品の開発の例

三菱鉛筆のPTFE分散体を利用していたお客様に、品質上の不具合が発生してしまいました。

PTFE⑰オレンジピール.png.jpg表面に荒れ発生「オレンジピール」

原因調査を行って、二つの要因を特定出来ました。

PTFE⑱泡.jpg

原因①「泡混入」

PTFE⑲凝集物.png.jpg

原因②「凝集物」

お客様の製造プロセスまで踏み込んで改善活動を行うことで問題が解決出来ました。

改善されたプロセスで解決

PTFE⑳プロセス.png

プロセス改善点

  1. 攪拌しながらPTFE混合
  2. 減圧状態で攪拌継続(泡抜き)
  3. 塗工前に濾過

プロセス改善活動によります、品質の問題が直しました。

PTFE㉑荒れ改善.png.jpg

表面荒れの改善に成功

PTFE㉒荒れのない表面.jpg

顕微鏡写真:凝集物・泡のない表面

当社では、これまで蓄積してきた様々な分散のノウハウを使い、お客様に満足していただく製品開発を目指しています。

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